あかねこの本棚

読んだ本の感想を書いたり紹介したりするところです

スーパーカブ トネ・コーケン

あらすじ

 山梨の高校に通う少女、小熊は両親も友達もおらず奨学金で一人細々と生活していた。そんなある日彼女は1台のスーパーカブに出会う。そこから始まる何気ない日常のちょっとした冒険。そんな中、突然小熊は同級生の礼子に話しかけられ—

「私もバイクで通学してるんだ。見る?」

一台のスーパーカブと生きる日常の物語。

 

 

 

 

 

 

点数 100点中85点

 

 

 

 

 

感想 ※ネタバレ注意

 良い意味で普通の物語です。物語の起伏が小さいことが逆にいい味を出してます。女子高生とスーパーカブ。一見すると合わなさそうな2つが上手く噛み合って物語を構成しています。また一人称とも三人称とも取れる独特な文章がこの物語にすごくマッチしていてストーリーに引き込まれます。

 起伏の少ないストーリーで唯一の山となる修学旅行編では小さな女の子の大きな冒険がこの文庫本サイズにぎゅっと収められていて凄く面白かったです。

 既に2巻も発売されているようなので是非読みたいですね。

賭博師は祈らない2 周藤蓮

あらすじ

 リーラ救出劇から1週間。一人の女を守った代償は決して小さくはなく、ラザルスは帝都を出なければならなかった。旅の途中、不慮の事故のせいである滞在することとなった村でラザルスを待ち受けていたのはさらなる厄介事で......。更にリーラにもある心が芽生え始める。

 

 

 

 

点数 100点中90点

 

 

 

 

感想 ※ネタバレ注意

 

 今回も素晴らしいですね。相変わらず文章に無駄がないです。必要以上のことは書かず、しかし情報が不足しているということもない。本当にストーリーがスッと頭に入ってきます。しかもその肝心なストーリーがこれまたよく出来ている。

 本作は、村の地主だった両親を殺され、その犯人に家を奪われようとする少女をラザルスがお得意の賭博で助けるというような話でしたが、ちゃんとキャラ一人一人が確立しているのでストーリー展開に無理がありません。「なんでラザルスはこんな行動をしたの?ご都合主義じゃない?」というような疑問も挙がることなく最後まで読めました。

 また締め方もいいですね。完全に続けさせる終わり方ですから3巻も期待していいでしょう。

 前回と変わらず、いや、むしろ大きく進歩した2巻でした。

賭博師は祈らない 周藤蓮

あらすじ

 

時は18世紀末、ロンドンに一人の賭博師がいた。男の名はラザルス。店から目をつけられることを嫌う彼は大金を稼ぐようなこともせず、ただ毎日を暮らしていくための小銭を稼いで過ごしていた。そんなある日、彼は間違って大勝してしまう。そしてそれを消費するために仕方なく購入させられた商品、それは奴隷の少女リーラだった。喉を焼かれ声も出せず、感情すら失くした彼女との不思議な共同生活。徐々に心を通わせていく二人にある事件が起こる___

 

 

点数  100点中95点

 

 

 

 

感想  ※ネタバレ注意

 

  一言で言うと「凄い」。これに限ります。文章はそこまで特別じゃない。可もなく不可もなくっていう感じなんですが、内容が素晴らしい。完全にストーリーで勝負している作品です。

  感情の失われたリーラがラザルスと生活することにより人間らしさを取り戻していく。その心の変化の仕方もとてもよく書けているし、起承転結もしっかりとしている。小説のお手本のような作品です。

  電撃小説大賞をとってもいい様な作品なんですけど、やはり「86ーエイティシックスー」に比べると文章の重さが軽いかな、と感じます。まぁ内容が違うんでそんなの当たり前なんですけどね。

続けれるような終わり方をしているので人気があれば続刊が出ると思います。個人的には来て欲しいですね。とてもいい作品でした。

 

 

 

君は月夜に光り輝く 佐野徹夜

あらすじ

 姉の死から、どこか投げやりに生きている主人公、岡田卓也。高校のクラスメイトに「発光病」で入院している少女、渡良瀬まみずがいた。発光病とは、月の光を浴びることで体が淡く光る不治の病で、その光は死期が近づくほど強くなるらしい。余命僅かな彼女には死ぬまでにしたいことがあるらしく、ひょんなことから主人公はそれを手伝うことになる。避けられない死の中で彼女は生きていく……。

 

 

 

 

点数  100点中80点

 

 

 

 

 

 

 

 

感想  ※ネタバレ注意

 

とても綺麗な話でした。彼女は死ぬ。小説の設定上避けられないこの結末こそがこの小説の凄さだと思います。これはあくまで持論なのですが、小説の中で大切なキャラ、重要なキャラを殺せすことが出来る小説は凄い小説だと思います。この話で言う渡良瀬まみず、彼女が最後に死ぬことによってこの物語は美しさを増した。これが最後に突然病気が治るとかいうご都合展開だと読者は一気に離れていくだろう。読み進めるうちにどんどん彼女に生きて欲しくなる。けど彼女は最後にはきっと死んでしまう。こういう風に読み進めていくうちに心が苦しくなるからこそこの小説は輝くのです。もう一度言います。人を殺すことが出来る小説は凄いのです。まあだからと言ってどんどん殺していくと面白くなくなりますが。そのへんのライン引きの上手さが小説家としての才能でしょう。

君は月夜に光り輝く。いい作品でした。

友達いらない同盟 園生凪

あらすじ

こいつになら殺されても仕方がない。そう思える相手を友達と定義する主人公の新藤大輔。そんな性格も災いしてクラス内ででは友達ができず、他のクラスに中学からの友達が1人いるだけだった。そんなある日、クラスメイトの少女、澄田が声をかけてきた、曰く、友達いらない同盟を組もうということらしい。友達はいらないが、学校を休んだ時のノートを見せあったりする人が欲しいということらしい。俺はその話に乗った。そうしてその日から俺の学校生活は変わり始める。

 

 

点数  100点中80点 

 

 

 

 

感想 ※ネタバレ注意

まず初めに受けた印象は文章が綺麗だなということ。淀みなく読むことができてスッと頭に入ってくる。もし自分が小説を書くとしたらこういう文章を書きたいですね。また設定も悪くない。卑屈系主人公と言ったら「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」の比企谷八幡が有名ですが、この主人公もしっかりとキャラが生きていて良かったです。基本文句のない小説なんですけどやっぱり最後の一押しが弱い。そこさえしっかりしていれば完璧な作品でした。

86ーエイティシックスー 安里アサト

あらすじ

 

サンマグノリア共和国。そこは日々、敵国である「帝国」の無人兵器《レギオン》から侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、かろうじて犠牲を出すことなくその脅威を退けていた。.......そう、表向きは。共和国全85区の外、存在しない《第86区》、そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《無人有人機》として戦い続けていた。

死地へ向かう若者達を率いる少年シンと、共和国内の管制室から特殊通信で指揮を執る指揮管制官となった少女レーナ。2人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる.........。

 

 

点数  100点中100点

 

 

 

 

感想  ※ネタバレ注意

  本屋で初めてこの作品を見た時、正直買うかどうか迷いました。なぜならこういう軍事物のラノベは当たり外れが大きい。どうしても設定が難しくなりがちな軍事物は作者の文章力が問われるんです。こういうラノベはいかに分かりやすく、しかし引き込むように読ませるかが大事。文章力、語彙力、構成力全てが必要とされる軍事系ラノベこそ作家の本当の実力が分かると私は勝手に思ってます。

 それを踏まえた上でこの小説、全てが完璧でした。場面転換の激しい戦闘シーンをハッキリと、美しい文で書き上げ、ストーリーはまさに王道の感動物。ストーリーが「転」に入る時の衝撃の大きさは凄かったです。

 難しい言葉を多様することは知識をひけらかしているようで嫌味になりやすいだけど、全然そんなことのなかった言葉たち。これぞ小説!って感じでした。これを読まずにこれからのライトノベルは語れないでしょう。そんな素晴らしい作品でした。

まるで人だな、ルーシー 零真似

あらすじ

 エキセントリックボックス、それは普段は箱だが、時には人にもなる不思議なもの。所有者は人身御供となり、1分間何でも出来るようになる力を使えるようになるが、使う度に代償として悲しみ、愛情、キスのおいしさなど自分を構成するものを1つずつ奪われる。しかも能力を使用して人を助けると、その人から、自分に関する記憶が消えてしまう。奪われた要素はエキセントリックボックスのものとなり、エキセントリックボックスはより人に近づいていくが、人身御供は段々と人間らしさを無くしていく。そんな中主人公は自分以外の人身御供に出会い、厄介なことに巻き込まれていく.......

 

 

 

点数 100点中83点

 

 

 

 

感想 ※ネタバレ注意

この小説を読んででまず最初に思ったことが文章の凄さです。今までのライトノベルを覆すような美しく、力強く、しかし読みやすい文。内容が内容なだけにライトノベルに位置しているが、一般文学に出ても全然通用する文章力だと思います。そしてこの文章で書かれる壮大なストーリー。正直この小説は設定の時点で勝ちな気がします。強い力には代償がいる。ありそうだけどなかった話を上手に書き上げた素晴らしい作品です。ただ残念な点が1つだけ。

 

それは後半の話の展開の仕方。真白と別れるところまでは凄い良かったのに、氷室に呼び出されたあたりから急に話が見えなくなった。氷室が自分が死んでまでして主人公をヒーローにしようとしているところまではなんとか理解出来たが、なぜ隣人が記憶を失っていないのかさっぱり理解できない。「私は私だ」という意志だけで記憶がいじられないなら主人公も苦労しなかっただろうに。自分の読解力が無いだけかもしれないが、もう少しわかりやすく書いて欲しかったなあと。

でも、贄にした感情はまた補充すればいいという考え方。そこは素直に感心しました。その発想があったかと。

 

 

 上記の点が良くなったら100点満点の小説でしたね。でもこの時点で自分が読んだライトノベルの中で1、2を争うぐらい小説面白かったです。是非読んでほしい。