あかねこの本棚

読んだ本の感想を書いたり紹介したりするところです

まるで人だな、ルーシー 零真似

あらすじ

 エキセントリックボックス、それは普段は箱だが、時には人にもなる不思議なもの。所有者は人身御供となり、1分間何でも出来るようになる力を使えるようになるが、使う度に代償として悲しみ、愛情、キスのおいしさなど自分を構成するものを1つずつ奪われる。しかも能力を使用して人を助けると、その人から、自分に関する記憶が消えてしまう。奪われた要素はエキセントリックボックスのものとなり、エキセントリックボックスはより人に近づいていくが、人身御供は段々と人間らしさを無くしていく。そんな中主人公は自分以外の人身御供に出会い、厄介なことに巻き込まれていく.......

 

 

 

点数 100点中83点

 

 

 

 

感想 ※ネタバレ注意

この小説を読んででまず最初に思ったことが文章の凄さです。今までのライトノベルを覆すような美しく、力強く、しかし読みやすい文。内容が内容なだけにライトノベルに位置しているが、一般文学に出ても全然通用する文章力だと思います。そしてこの文章で書かれる壮大なストーリー。正直この小説は設定の時点で勝ちな気がします。強い力には代償がいる。ありそうだけどなかった話を上手に書き上げた素晴らしい作品です。ただ残念な点が1つだけ。

 

それは後半の話の展開の仕方。真白と別れるところまでは凄い良かったのに、氷室に呼び出されたあたりから急に話が見えなくなった。氷室が自分が死んでまでして主人公をヒーローにしようとしているところまではなんとか理解出来たが、なぜ隣人が記憶を失っていないのかさっぱり理解できない。「私は私だ」という意志だけで記憶がいじられないなら主人公も苦労しなかっただろうに。自分の読解力が無いだけかもしれないが、もう少しわかりやすく書いて欲しかったなあと。

でも、贄にした感情はまた補充すればいいという考え方。そこは素直に感心しました。その発想があったかと。

 

 

 上記の点が良くなったら100点満点の小説でしたね。でもこの時点で自分が読んだライトノベルの中で1、2を争うぐらい小説面白かったです。是非読んでほしい。

俺の妹がこんなに可愛いわけがない1 伏見つかさ

あらすじ

妹、 高坂桐乃は雑誌のモデルになるくらいの美人だ。他にも陸上で全校大会に行ったり、県内4〜5位の成績だったりとかなり出来た人間だ。しかし彼女には誰にも言えない秘密があった。それは「妹ゲー」好きのオタクだという事実。ある日、兄である高坂京介に「人生相談」としてこのことを打ち明けるが……。

 

 

 

 

 

点数 100点中82点

 

 

 

 

 

感想  ※ネタバレ注意

有名なライトノベルを今更ながら読んで見たけど、ラノベ特有の文の軽さの割にはしっかりと中身があって面白かったです。ライトノベルは1巻が売れなくて打ち切りになったとき用に、1巻だけで1度物語を完結させる(と、個人的に考えている)だけあって、妹が父親オタバレしたあとの展開に少し無理があったような気がします。そこの部分でもう少し読者をちゃんと納得させるような話が書けていたらとてもいい作品になっていたと思います。ここからどうやって話を広げるかが楽しみですね。

 

赤朽葉家の伝説 桜庭一樹

あらすじ

 祖母である万葉は『辺境の人』に置いていかれた千里眼の持ち主だった。長じて製鉄業で財を成した旧赤朽葉家に望まれて輿入れし、千里眼奥様となった。

 母は漫画家だった。子供ではなかったが大人にもなりきれなかった母は、終わってしまった青春に縋るように漫画を描いていた。

 私は何者でもない。祖母や母のように何かをしたわけでもなく、ただただ生きてきた。しかし、祖母が死ぬ間際に残した謎。それが私を変える。 祖母は一体何者だったのか。赤朽葉家に生きた3人の女を描いた作品。

 

 

 

 

 

 

点数  100点中90点 

 

 

 

 

 

感想(ネタバレ注意)

 この物語は三部構成で出来ています。一部は千里眼奥様、赤朽葉万葉。二部は青春時代は暴走族、高校を卒業すると漫画家という異色の経歴を持つ赤朽葉毛毱。三部は何かをした訳では無い、ただ普通に生きてきた赤朽葉瞳子

 

この物語は一部、二部まではその人の人生が綺麗な、しかし力強い文で書かれている。そして三部は、祖母が死ぬ間際に言った一言「私は、人を殺したことがあるんだよ」の真相を確かめるべく、主人公である瞳子が動きます。祖母は本当に殺人者なのか、それとも単なる誤解なのか。祖母の周りで亡くなった人物を調べるが……。

 

この本は人の一生(瞳子は死なないが)がとても美しく書かれています。一部、二部では激動の時代を生き抜く二人の女の姿が瞳子の過去語り形式で書かれている、が、赤朽葉万葉、毛毱という人物に自分の中で形成され、簡単に感情移入できる。だから悲しいシーンでは時折泣きそうになりました。ここまで人を魅了させるのも、流石桜庭一樹といったところでしょう。

そして三部、瞳子による推理パートだが正直いってあまり面白くはなかった。どうも推理の後付け感があるんです。確かに「空飛ぶ男」は一部の一番最初から伏線を張っていたけど、一部、二部の面白さと比べると「うーん」って感じです。確かに三部も自分語りにしてしまうとオチがなくなってしまうのはわかるけど、そこを綺麗にまとめることが出来たら文句無しの100点の小説だった。

 

 

桜庭一樹らしい、「少女」をメインにした小説だった。美しく、力強い文で書かれるこの小説は是非ともオススメします。